イジワルな彼の甘い罠
外に出ると、びゅう、と吹く冷たい風に身震いをした。
それでも煙草を吸いたくて、寒さに耐え火をつける。「はぁ」と煙を吐き出すと、苦さのある香りが肺に入り込んでいくのを感じた。
ひとりになり仕事の緊張感から解放されると、不意に思い出すのは
『……もう、おしまい』
そう言って部屋を出ていった、あの姿。
「……俺がなにしたっていうんだよ」
高校の同級生・早希と体の関係を持つようになって、早7年。
先日ついに、向こうから終わりを告げられた。
いつかこうなるとは思ってた。
別に付き合っていたわけじゃない。いつ終わりになってもおかしくない。
ただそれを告げるのが、俺か向こうかわからなかっただけで、出て行くその背中を追いかけることもなく、別れを緩やかに受け入れることしか出来なかった。