イジワルな彼の甘い罠



外に出ると、びゅう、と吹く冷たい風に身震いをした。

それでも煙草を吸いたくて、寒さに耐え火をつける。「はぁ」と煙を吐き出すと、苦さのある香りが肺に入り込んでいくのを感じた。



ひとりになり仕事の緊張感から解放されると、不意に思い出すのは



『……もう、おしまい』



そう言って部屋を出ていった、あの姿。



「……俺がなにしたっていうんだよ」



高校の同級生・早希と体の関係を持つようになって、早7年。

先日ついに、向こうから終わりを告げられた。



いつかこうなるとは思ってた。

別に付き合っていたわけじゃない。いつ終わりになってもおかしくない。

ただそれを告げるのが、俺か向こうかわからなかっただけで、出て行くその背中を追いかけることもなく、別れを緩やかに受け入れることしか出来なかった。



< 153 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop