イジワルな彼の甘い罠
一応メールはしてみたが……あいつアドレス変えやがった。
いつもメールひとつで呼び出して、することして、帰って、それだけの関係だった俺たちは、互いの電話番号すらも知らない。
あいつの家も知らないし、会社も知らない俺は、つまり向こうが拒めばもう会うことすら出来ないわけだ。
さすがにハルミや玲二に聞くのは……プライドが許さねぇ。
からかわれることが目に見えているのに加え、変な意地もあり、あれから一週間と少し、今だ連絡は取れていない。
「航」
「あ?なんだ、玲二か」
すると中から姿を表したのは、今日も堅苦しいスーツに生真面目そうな顔をした玲二。
首元まできっちりと締めたネクタイが、見ているだけで窮屈だ。