イジワルな彼の甘い罠
分かってる
踏み出せない自分が、臆病なだけなこと
分かってる
『体だけ』なんて言いながら、『心が欲しい』と、自分が一番求めていること
はっきりと自覚する心に、俺はその手からライターをそっと受け取る。
「おい玲二、そこまで話したんだからついでに教えろ。……あいつ、いつどこで見合いするって言ってた」
そんな俺に、玲二はそれまでの真剣な顔をふっと緩ませる。
その表情から読み取るのは、微かな安心感。
「今度の日曜、早希の実家の近くの日本料亭、とまでしか」
「……それだけ分かれば充分だな」
分かってる、
分かってた、
同じ教室にいたあの頃から
ずっと本気で、恋をしていたこと