イジワルな彼の甘い罠
「お仕事はシステムエンジニアでしたっけ?女性なのにすごいわねぇ」
「いいえー、お恥ずかしい話、仕事ばかりで30にもなって恋人のひとりもいない娘でして……」
私を見て話題を振る相手の母親に、母は呆れたように笑って答える。
「えぇ!?もったいないなぁ、早希ちゃん30にしてはこんなに綺麗なのに!」
そこに口を挟んだ彼のひと言に、嫌でも耳がピクッと反応する。
って……『30にしては』ってどういう意味!!
褒めてるつもり!?それとも嫌味!?
そうイラっとする私も気にせず、彼は目の前の料理をもぐもぐと食べ始めた。
私を見るより料理ばかりを見る彼に、先ほどまで言い聞かせていた『もしかしたら』という気持ちも、みるみるうちにしぼんでいく。
……ダメだ、この人とは無理。
お見合いで上手くいけばなんて思ったけど、やっぱり上手くいくようなことばっかりじゃないんだな……。