イジワルな彼の甘い罠



「本日は大変気持ちのいいお天気ですし、外でお散歩などいかがでしょう?若いおふたりも人目がない方が打ち解けやすいかと」

「それもそうねぇ。早希、いってらっしゃい」

「えっ、いや私は……」



せっかくだけれど、この人とふたりきりになったところで打ち解けられる自信もない。

そんな気持ちから渋るものの、男性は笑顔のまま優しく声をかける。



「ご遠慮なさらずに。うちの庭園はわざわざ遠方から見にいらっしゃるお客様も多いんです。さぁ、どうぞ」



よくよく見ると、その笑顔はどこか見覚えがある気もする。けれど、どこかで会ったような記憶もない。

気のせいかな……?



「じゃあ早希ちゃん、行こうか」

「あ……はぁ」



不思議に思いながらも『どこかで会ったことありますか?』なんて聞けるはずもなく、多岐川さんの言葉に仕方なく席を立ち、靴を履いて外へ出た。



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