イジワルな彼の甘い罠
自分たちがいた部屋から、少し歩いた先にある中庭。
そこには、真っ白な石畳に見事な松の木。赤い小さな橋がかけられた大きな池に、大きな鯉が泳ぎ……と本当に見事な日本庭園が広がっていた。
わ……すごい。
わざわざ店主が来て見てみろと言うだけあるその景色に、思わず「わぁ……」息をこぼした。
隣を歩く彼を見ると、そんな景色を見る目も冷ややかになってしまうけれど。
「早希ちゃんはどんな人が好みとかある?」
「好み、ですか?」
口の端に先ほど食べていた料理のソースをつけたまま問う彼に、思わず『あなたと真逆の人ですね』と言いかけた言葉を飲み込む。