イジワルな彼の甘い罠
「……ん……航……?」
スーツ姿のままリビングのソファで寝ていたらしい早希は、電気の眩しさと俺の声に目を覚ますとゆっくりと体を起こす。
「なんだよお前、電気もつけないで。体調悪いのか?」
「うん……少し。あ、ごめん、ご飯作ってないけど……」
「あー、いい。青田と飯食ってきた、っつーか外で食べるって連絡しただろ」
俺からのメールもまともに見ていなかったのだろう。「そうだっけ」とぐしゃぐしゃな髪のままつぶやくその顔は、青白く確かに体調が悪そうだ。
「どうした?風邪か?」
「ん……ごめん、先に寝る」
余程具合が悪いのか、俺の問いかけにもまともに答えることなく、早希はそのままヨロヨロとした足取りで奥の寝室へと向かう。
どうしたんだ?滅多に風邪もひかないような奴が珍しい……。