イジワルな彼の甘い罠
いつものように慣れた夜道を歩き、着いた小さなアパート。
ガチャ、と開けたドアの向こうには、今日もカメラをいじるその姿がある。
「……おう。早いな」
「ハルミとそこで飲んでたから」
「ふーん」
靴を脱ぎ家に上がれば、相変わらず生えたままの髭に鬱陶しいのかヘアピンで適当に止められた前髪。
ピンって……女物?
つい目ざとく気にしてから、気にしないように目をそらす。
「お前らもしょっちゅう一緒にいて飽きねーな」
ふん、とこぼされた笑いに『それ以外に会う男もいないのかよ』の言葉が、言わなくても聞こえてくる。
「ハルミとは友達以上の仲ですから」
「……お前、まさかハルミとそういう……」
「って、ない!そういう意味じゃなくて!友達以上に仲が良いってこと!」
確かにハルミは体は男のままだけど……中身は私以上に女だし。私とハルミは、同性の親友、その言葉以外見つからない仲だ。