イジワルな彼の甘い罠
ごつごつとした大きな背中。その体に触れようと、手を伸ばす。
けれどどうしてか、つい先程まであんなに触れることが出来ていた体も、行為が終わると触れられなくなる。
あんなに互いを見せていたのに、背中ひとつ触れることにすら勇気が、いる。
私はそう手を引っ込めて、同じように背中を向けるように体の向きを変えて目を閉じた。
「……、」
向け合った背中。
ベッドからの航の匂いと、灰皿から溢れる煙草の吸殻、テーブルには綺麗なカメラが置かれたまま。
……この景色が、愛おしい。
そう感じてしまっている私は、きっともう手遅れ。
自分の意思で、終わることなんて出来ない。
糸は、断ち切れない。