イジワルな彼の甘い罠
「唯川さん!俺手伝いますよ!」
「えっ?」
そんな微妙な空気が漂い始める中、名乗りをあげたのはそれまで隣で黙って話を聞いていた八代くん。
「いいの?泊まり込みは確実だよ?」
「はい、余裕です!俺妻子どころか彼女もいないですし!」
「おっ、じゃあ決まりだな!頼むぞ!」
それ幸いと先輩は仕事を押し付けると、逃げるように自分のデスクへ戻って行った。
「……はぁ、」
他部署がデータがとんで困っているのは確かだし、八代くんまでやる気になってくれているし……仕方ない。これはやるしかない、か。
観念したように肩を落とすと、またパソコンへ向かいキーボードを叩く。
まぁね、どうせ私にはなにもありませんけど。
旦那や子供どころか彼氏もいないし、あるといえば、セフレひとり。
……って、余計虚しい。