イジワルな彼の甘い罠
「まぁそのうちなんとかなるだろうし、いっそこのまま独身でも全然いいし」
「あんたねぇ、それってどうなの……」
話していると、会話を一区切りさせるようにマイクのスイッチが入る音が聞こえる。
『ご参列者の皆様、大変お待たせ致しました。ただいまよりー……』
「あ、始まった」
そしてチャペルに誘導され、挙式が始まった。
大きなチャペルの中、真っ白なタキシードに身を包み先に現れた新郎。そしてその後に続いて、新婦である菜摘とその父親が入場する。
「菜摘、綺麗だねぇ……」
「……うん、」
思わず言葉をもらす美緒に、私も小さく頷いた。
真っ白なドレスの裾が、ふんわりと赤いバージンロードに広がる。
長いベールからのぞくのは、今までで一番綺麗な横顔。
「それでは、指輪の交換を」
賛美歌に包まれ、二人は互いの指に真新しい指輪をはめ合う。
それだけの仕草すらも、幸せそうに笑って。
「健やかなる時も病める時も、お互いに愛し慰め助け、命のある限り誠実であることを神に誓いますか」
「……はい、誓います」
「誓います」
誓い合い交わされるキスに、チャペルの中は幸せと祝福で溢れた。