イジワルな彼の甘い罠
「んだよ、胸元しまえよ。見苦しい」
「あ!?」
見苦しいってどういうことよ!!
褒め言葉のひとつもないどころか、感じの悪いその言い方に、私は思わずその顔を睨む。
たまにはいい格好してると思えば、中身は相変わらず……!
「お前もな。……あー、やっと終わった」
航は疲れた、といった様子で首をコキコキと鳴らす。
「今日の仕事はこれだけ?」
「あぁ、お前は?この後は。特に決めてないなら、飯行くか」
「え!?ふたりで!?」
披露宴はないし、美緒たちと食事をする約束もまだしていない。だから全く構わないのだけれど……まさかのその誘いに私はつい驚く。
「当然だろうが。嫌ならいいけど」
「い、行く!行く行く!」
「んじゃまだ色々やることあるから、ロビーで適当に待ってろ」
大慌てで首を縦に振る私に、航は笑顔ひとつなく言うと、荷物を肩に担ぎ一旦式場の中に入って行く。