イジワルな彼の甘い罠
……だったのに。
「らっしゃーせー!」
ドレスとスーツ姿の私と航がやって来たのは、式場から車を十数分走らせた先にある、一軒のラーメン屋だった。
「チャーシュー麺。お前は」
「……ありえない……」
「は?」
いたって普通に注文をする航に、私はわなわなと込み上げるなんともいえない気持ちをぶつけるように、そのネクタイをぐいっと引っ張った。
「ありえない!!パーティドレスとスーツでラーメン屋って!バカなの!?」
「じゃあ食わないのか?」
「食べるけど!!私味噌ラーメンで!!」
「はいよー」
カウンター席のみの小さな店の中、航は私の手をネクタイからほどかせ席につく。それに続いて、悔やみながら私も続いて席についた。
期待した私がバカだった……!