イジワルな彼の甘い罠
「そりゃそうだ。好きでこの仕事してるんだからな。特に結婚式の撮影は、被写体につられるっつーか」
「つられる?」
照れ臭いのか、航はこちらを見ることなく小さく息を吐き髪をぐしゃぐしゃとかいた。
「レンズ越しに見ると全員が幸せそうに笑っててさ。……あんな顔見てたら、こっちまでつられて笑顔にもなるだろ」
新郎も新婦も、見守る人々も、幸せそうに笑う。
レンズ越しに見るその世界は、きっとなにより幸福感に溢れ、キラキラと輝くのだろう。
「当然でしょ。大好きな人と一生一緒にいられるんだから、幸せに決まってる」
その瞬間をおさめ、一生に残す仕事をするのだから、航の仕事はやっぱりすごいことなのかもしれない。
その幸せを想像しただけで、自分の顔にも笑みがこぼれる。