イジワルな彼の甘い罠
『あっ、ハルミー!澤村くん!あれ、それと……』
『……おう』
高校時代から今でも仲の良い友人・ハルミと、同じクラスで生徒会長を務めていた澤村くんという男の子。
そして、そのふたりと一緒にいたのが航。
久々に会った航は、顔立ちが少し年相応になったくらいで、目つきの悪さや無愛想な表情などはあまり変わっていなくて……ただ金髪が黒髪になっていたのと、耳のピアスが減っていた。
ただそれだけの変化が、彼をすごく大人に見せた。
けれど相変わらず愛想はないし口数も少ない。少し話しても口は悪いしとっつきづらい。
なのに、どうしてだろうか。
『遠野くん、二次会いく?』
『あー……お前は?』
『うーん、長くなりそうだし、どうしようかなって思ってて』
『……ふーん、』
店の外の暗がりで、にぎわう皆の声を遠くに聞きながらそっと落とされたキス。
触れただけの柔らかな感触と、ふわりと香ったタバコの匂いに心は揺れた。
『……迷ってるなら、うち来いよ』
彼らしい飾らない一言に迷うことなく頷いて、その日から関係は始まった。