いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「先輩には、僕が生意気だった頃からお世話になってるからね…形だけでも真似したいんだよ」
天地が生意気だった頃、なんてものは全く想像がつかないのだが。
「だから先輩が亡くなったって聞いたとき…炎夏に越してくるよう仄さんに薦めたんだ。せめて彼の娘さんに、僕が力になれることはないかと思ってさ」
「そう…だったんですか」
母と天地の接点は、父を通してのものだったのか…初めて知った。
「だから使い慣れない能力でも、君を救うことが出来て良かったよ。本当は陸くんの治療にも使えればいいんだけど…」
「暁、やっぱり駄目なの?」
「無理だね…魔法で治癒を促そうとすると、傷に掛かったあの魔法は余計に反発して宿主――陸くんの身体に負担を掛けてしまうんだ」
だからつらいだろうが自然治癒を待つしかない、と天地は言う。
「……あの、先生…陸には私が今回怪我したこと、言わないでください」
「え?」
「陸に心配、掛けたくないんです…それに陸は怪我が治るまで、ずっと耐えなきゃいけないのに…私だけ治して貰ったなんて、申し訳なくて」
「……そうか、解ったよ。もう暫くしないと目を覚まさないだろうから、それまで君も少し休んでおきなさい」
「有難う、先生。それから…賢夜、此処まで私を運んでくれて有難う。重くなかった?」
まだ心配なのか、身体を支えてくれていた賢夜を振り向くと、賢夜は予想外だったように目を瞬いた。
「あ、ああ。全然……晴海、俺が怖くないのか」
「うん…賢夜は、賢夜だもの」
いくら互いに似ていても、賢夜は慶夜とは違う――漸くそう思えるようになった。
天地が生意気だった頃、なんてものは全く想像がつかないのだが。
「だから先輩が亡くなったって聞いたとき…炎夏に越してくるよう仄さんに薦めたんだ。せめて彼の娘さんに、僕が力になれることはないかと思ってさ」
「そう…だったんですか」
母と天地の接点は、父を通してのものだったのか…初めて知った。
「だから使い慣れない能力でも、君を救うことが出来て良かったよ。本当は陸くんの治療にも使えればいいんだけど…」
「暁、やっぱり駄目なの?」
「無理だね…魔法で治癒を促そうとすると、傷に掛かったあの魔法は余計に反発して宿主――陸くんの身体に負担を掛けてしまうんだ」
だからつらいだろうが自然治癒を待つしかない、と天地は言う。
「……あの、先生…陸には私が今回怪我したこと、言わないでください」
「え?」
「陸に心配、掛けたくないんです…それに陸は怪我が治るまで、ずっと耐えなきゃいけないのに…私だけ治して貰ったなんて、申し訳なくて」
「……そうか、解ったよ。もう暫くしないと目を覚まさないだろうから、それまで君も少し休んでおきなさい」
「有難う、先生。それから…賢夜、此処まで私を運んでくれて有難う。重くなかった?」
まだ心配なのか、身体を支えてくれていた賢夜を振り向くと、賢夜は予想外だったように目を瞬いた。
「あ、ああ。全然……晴海、俺が怖くないのか」
「うん…賢夜は、賢夜だもの」
いくら互いに似ていても、賢夜は慶夜とは違う――漸くそう思えるようになった。