いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「じゃあ、晴海は陸と此処で待ってて?私らは暁と話してくるから」

「あ、だったら私も」

立ち上がり掛けると、夕夏にとんとんと肩を軽く叩かれた。

「君は陸と一緒にいなよ」

「え、でも…」

いいから、告げながら夕夏は賢夜と共に部屋から出て行ってしまった。

どうやら二人きりになるよう気を遣ってくれたらしい。

しかし何だか変に陸のことを意識してしまい、やたら緊張してきた。

「え、えっと、陸…」

「うん?」

ぎこちなく陸の顔を振り向くと、優しげな真紅の双眸がこちらを見つめ返した。

「あの雪乃って子のこと…陸はどう、思ってる…?」

「…へ?」

我ながら唐突な話題を振ったとは思ったが、面食らったように目を丸くする陸に意を決して言葉を続けた。

「あの子が、陸のことを好きだって…陸は自分のものだって、そう私に言ってたから。だからもし、陸もあの子のことが」

「っそれはないよ」

すると陸は少し冷たい口振りで、即座にこちらの言葉を遮った。

「っ…あいつには悪いけど。俺は雪乃のこと、何とも思ってない」
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