いとしいこどもたちに祝福を【前編】
――夕夏が天地と相談した結果、陸には才臥家に戻っても良いとの許可が下りた。

但し、傷の具合を診るため二、三日に一度は診療所に通うことが条件らしい。

まだ万全ではない傷の具合からすれば、診療所に留まっていたほうが負担は少ないのだが。

それでも陸は、戻ってきてくれる。

“晴の傍にいるって約束したから”――そう言って微笑んでくれたのが、単純に嬉しかった。

「それじゃ、みんなが来るまで気を付けるんだよ?玄関開ける前にちゃんと誰だか確認してね?」

「大丈夫、解ってるよ」

仄は、時折晴海を妙に子供扱いしてくることがある。

――父と弟を失って、残されたのは自分一人だけだから。

母がつい過保護になってしまう理由を知っているから、いつもその言葉に違和感を感じつつ強くは否定出来なかった。

(陸をうちに置くって決めたときも、だからあんなに喜んでたんだろうな…)

「行ってらっしゃい、母さん」

「はいよ、行ってくる」

――玄関先で仄を見送ると、ふと特に何もやることない状況に気が付いた。

朝食と母の弁当は寝過ごして作りそびれたし、自分の分だけ朝食を作るのも気乗りしない。

「…朝抜きでもいいかな」

陸たちは昼前にこちらに来ると言っていたから、みんなの分の昼食を作る準備でもしていようか。

それなら夕夏と賢夜にも喜んで貰えそうだ。
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