いとしいこどもたちに祝福を【前編】
そのとき――ぐらりと大きく目の前が揺らいだ。

「……っ!!」

地震、いや違う、眩暈(めまい)か。

床にしゃがみ込んでじっとしていると、次第に胸騒ぎがして落ち着かない気持ちに陥った。

暑くもないのに汗が吹き出て、寒くもないのに手がかたかたと震える。

『――……る』

ふと遠くから、誰かの声に名を呼ばれた気がする。

「…だれ?」

恐る恐る問い返すも、此処には自分以外に誰もいる筈がなく、当然返答もない。

気のせい、か。

『………はる…』

「!」

違う――気のせいじゃない。

声と表現するにはあまりに不確かで、音と形容するのも正しいかはわからない。

だけど確かに、聞こえた。

「私を、呼んでる……」

誰が、何処から?

「どうして、私のことを呼んでるの…?」
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