いとしいこどもたちに祝福を【前編】
風弓もそれを理解してか、晴海に向かって両手を翳したが、その手の震えは止まらない。

「う、ああ……っ」

「風弓っ…」

風弓は小さくかぶりを降ると、両手を下ろしてしまった。

自分の能力で晴海を危険に晒したため、再び彼女に向けて力を使うことを恐れているのか。

「…すまない、風弓。有難う」

項垂れた風弓の、晴海と同じ赤茶色の髪を陸は軽く撫でた。

それに対して、風弓はびくんと肩を震わせたが俯いたまま動かなかった。

仕方ない――他にはこれしか、方法がないんだ。

陸は大きく息をつくと、晴海の頬に掛かっていた髪の毛を払い除けた。

次に、晴海の顎を軽く持ち上げてやると、その行動の意図を察したらしい風弓が弾かれたように顔を上げる。

「……あ」

「風弓…どうした?」

振り返って声を掛けると、風弓はばつの悪そうな表情で再び視線を落とした。

「……いや」

これから行う行為は、他人の自分より肉親の風弓のほうが、適任と言えば適任なのだが。

「…気に食わないんなら代わってくれるか」

そう思い訊ねてみたが、風弓はぶんぶんと大きく首を振った。
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