いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…妙だと思ってたんだ。月虹に居場所が割れたのに、ずっと陸が炎夏に留まってる理由…」

大分落ち着いたらしく、風弓は穏やかな口調でそう呟いた。

「姉ちゃんが、陸を引き留めたんだろ」

「俺が、彼女の傍にいたいと望んだからだよ」

陸の回答に風弓は小さく頷くと、晴海の頬を軽く撫でた。

「…そう、か。俺や親父のこと、姉ちゃんに話したか?」

「……いや」

「それでいい。姉ちゃんにとっては、俺も親父も死んだ人間だからな」

風弓はそう言いながら、晴海を見つめて寂しげに微笑んだ。

「子供の頃、俺が絶対守るって…ずっと傍にいるって言ったのに、俺にはそれが出来なかった」

「風弓…」

「…それどころか、見境なくして自分の手で殺しかけるなんてよ…全部お前のせいにしようとした罰かな」

「それはっ…」

「陸が悪いんじゃないことくらい、解ってた筈なのに」

風弓は矢継ぎ早に言葉を続けて陸の言葉を遮った。

「でも、親父が何で突然お前を逃がしたのか、解らなくて…混乱してたんだ。…それを月虹に利用されちまった」

馬鹿だよな、と呟きつつ風弓は自嘲げに笑って見せた。

「風弓……ごめん」
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