いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「俺にとってお前が本当に薄暮の実験体かなんてことはどうだっていいんだ。お前が晴海の傍から、消えさえすればいいんだよ。お前さえ消えれば…お前が炎夏に現れてからろくなことが起きやしねぇんだよっ!!」

「…俺がいなくても、彼女はお前には振り向かないぞ」

秦の恨めしげな視線に睨まれ、思わず反論が口を突いて出た。

「っ黙れ!!」

力任せに振るわれた拳に右頬を打ち据えられ、口の中が切れたらしく血の味が口内に広がる。

「お前がいなければ、俺だってっ……俺は、四年前からずっとあいつを見てるんだ!なのにっ…突然出てきた他所者野郎に横取りされて堪るかっ!!」

(四年、前――)

「それを貴様っ…!一つ屋根の下で暮らすだなんて羨ましいにも程があるんだよっ!!寝込み襲ったりしてねえだろうな!!」

「そんなの、お前じゃあるまいし」と咄嗟に口にし掛けたが。

意識がない晴海に対して、つい数時間前に行なった行為のことを不意に思い返した。

(いや、あれは緊急事態の人命救助の一環としてやったことであって、寝込みを襲ったのとは違う…!!)

「何でそこでまた黙りやがるんだよっ!!」

秦は苛立った叫び声を上げると、陸の喉元に乱暴に手を掛けた。

「薄暮へ送り返す前に、この間やられたときのお返しをさせて貰うか…!!」

「くっ……は…」

その手にどんどん力が込められ、息が詰まる。

「何度もこの俺に楯突いて恥をかかせてやがってっ…本当なら殺したいくらいだがな…その代わり死ぬ程痛い目に遭わせてやる。死んだほうがいいと思うくらいになっ」

秦はそう良い放つと、突き放すように首から手を退けた。
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