いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「私には気兼ねなく頼れる弟がいるから、そういう点では恵まれてるけどさ。晴海は今まで一人で頑張って来たんだろ、つらかったら私や賢夜を頼ってよ」

「…でも、もしそのせいで頼った人をもっと大変なことに巻き込んでしまったら?」

今はそれが、一番怖い。

助けてくれた人々が、そのせいで苦しんだり傷付いたりしたら――

「そのときは、またどうすれば良いかそのとき考えればいい。一人で悩んで立ち止まるより、大勢でぶち当たったほうが目の前の壁は壊れ易いんじゃない?」

「…そう、なのかな?」

「壊しづらい壁でも、絶対に壊せない筈ないんだからさ。解決するまではみんなつらいかも知れないけど、壁が壊せれば一緒に笑えるよ」

そう言って笑ってくれた夕夏の笑顔を見た瞬間、胸のつかえが解けたように気が楽になった。

「……うん、ありがとう」

夕夏が傍にいてくれて、良かった。

ずっと一人のままだったら気が付けなかったことが沢山ある。

「あの馬鹿も、しつこさだけは昔から人一倍だから、なかなか面倒だけど勝てない相手じゃないし」

「…秦はどうしてあんな風にしか人と話せないのかな」

もっと言動が落ち着いて身分を鼻に掛けることさえなければ、周囲から敬遠されることもないだろうに。

「身近に間違いを正してくれる人がいないんだよ。顔色窺って取り巻いてる奴なら、それなりにいるけど」

「…ちょっと可哀想、だね」

「少しだけ、ね。親が親だし、生まれつきの馬鹿だから聞く耳持たないって可能性も高いし」

「――同感だな」
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