いとしいこどもたちに祝福を【前編】
――結局「女装しても髪色が同じならどうせ目立つ」と賢夜に突っ込まれ、漸く夕夏は変装を諦めてくれた。
せめて眼の色だけでもごまかそうという日野からの提案を受けて、陸は彼から伊達眼鏡を借りていた。
色は入っていないため気休めに過ぎないが、一応かけておくと言い眼鏡を取りに船内へ戻った陸の背に、晴海は声を掛けた。
「…眼鏡、似合うね」
「晴」
少し疲れた面持ちで息をついた陸は、長椅子に座りながら眼鏡越しにふとこちらを見上げた。
その表情を見て、先程助け船を出すのを遅らせたことに対して少し罪悪感が募る。
「ぁ、あのね陸。さっきすぐ助けなかったこと…怒ってる?」
恐る恐るそのことを訊ねてみると、陸は首を傾げて眼を瞬いた後にくすりと笑った。
「怒ってないよ」
「…良かった」
きっと陸は、怒っていたとしても同じように答えたかも知れないが――そう言ってくれたことに安堵する。
「俺も楽しかったんだ。勿論女装は勘弁だけど。もし兄弟がいたら、あんな感じなのかな。一緒に騒いだり笑ったり、喧嘩したりするのかな」
確かに、あの二人と一緒にいるとそんな風に感じることは多い。
まだ見ぬ陸の家族には、兄弟はいるのだろうか。
「!そういえば」
「ん?」
兄弟、と言えば――
せめて眼の色だけでもごまかそうという日野からの提案を受けて、陸は彼から伊達眼鏡を借りていた。
色は入っていないため気休めに過ぎないが、一応かけておくと言い眼鏡を取りに船内へ戻った陸の背に、晴海は声を掛けた。
「…眼鏡、似合うね」
「晴」
少し疲れた面持ちで息をついた陸は、長椅子に座りながら眼鏡越しにふとこちらを見上げた。
その表情を見て、先程助け船を出すのを遅らせたことに対して少し罪悪感が募る。
「ぁ、あのね陸。さっきすぐ助けなかったこと…怒ってる?」
恐る恐るそのことを訊ねてみると、陸は首を傾げて眼を瞬いた後にくすりと笑った。
「怒ってないよ」
「…良かった」
きっと陸は、怒っていたとしても同じように答えたかも知れないが――そう言ってくれたことに安堵する。
「俺も楽しかったんだ。勿論女装は勘弁だけど。もし兄弟がいたら、あんな感じなのかな。一緒に騒いだり笑ったり、喧嘩したりするのかな」
確かに、あの二人と一緒にいるとそんな風に感じることは多い。
まだ見ぬ陸の家族には、兄弟はいるのだろうか。
「!そういえば」
「ん?」
兄弟、と言えば――