いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「言いそびれてたんだけどね…私、炎夏で凄く陸と似てる人に逢ったの」

「…俺に?」

陸は驚いたように目を丸くすると、少し眉を顰めた。

「うん。歳は陸より少し上に見えたし、髪は金髪で眼の色も違ったけど、顔も声もそっくり」

「…金髪?それって最近の話?」

「確か昨日の朝…だったかな?秦がうちの外で待ち伏せてて…でも、その人が助けてくれたの」

すると陸は、何か考え込むように拳を握り締めて俯いた。

「…ごめんね、ずっと黙ってたみたいになって」

何故か昨日の昼間の記憶が酷く曖昧で、先程まで京に出逢ったことを忘れ掛けていた。

「いや、いいんだ。ところで、その人って能力者だったの?」

「ううん。風の魔法は使ってたけど、春雷の霊媒師だって聞いたよ。何か大切なものを捜してるって…」

本当なら、もっと話を色々してみたかったのだが――それ以上訊ねる前に、去ってしまったから。

「そうか、だからあいつ…」

「どうしたの?」

「秦にその人のこと、訊かれたんだ。お前の仲間かって…俺には何のことか解らなかったけど…その人が晴のこと守ってくれたのか」

良かった、と言いつつ陸は少し複雑そうに笑った。

「あのね、陸。あくまでも推測だけど…もしかしたらその人、陸と関係あるのかも」

「…俺と、関係?」
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