いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「えっ…あ……陸っ…?」

「晴、あったかい」

狼狽する晴海を他所に、耳元で陸がくすりと囁く。

「そ…そう、かなぁっ」

もしかして、こちらが慌てている反応を見てからかっているのだろうか。

いや、陸は今まで一般常識的なことも知らなかった事柄が多いから、こうして触れ合う際の度合いも良く判ってないのかも知れない。

うん、きっとそうに違いない。

「…なんか安心したら急に眠くなってきた」

(あ、安心…?)

抱き枕扱いされている感が否めないが――陸が落ち着くならそれはそれでいいかもなんて、思ってしまった。

「そっ…そういえば陸、ずっと寝てないよね。少し休んだら?」

「ん。そうする」

これで解放される、と思いきや、陸は晴海を腕に抱いたまま、横倒しに長椅子に寝転がった。

「あれっ」

このままだと本当に抱き枕扱いされてしまう。

「ち、ちょっと待って陸っ…」

「…昨日はほんとにたくさん、いろいろあったから」

疲れた、と辿々しい口調で呟きながら、陸はすぐ眠りに落ちてしまった。
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