いとしいこどもたちに祝福を【前編】
(っ…雪乃の奴、俺にはわざと黙ってやがったのか)

「あの誇大表現の塊の報告を馬鹿正直に信じる気かよ?俺の家族がいるのは秋雨だし、うちで能力者なのは俺だけだ。てめえの都合のいいように話を進めんな」

目の前の連中がその気になれば、母と姉の所在くらい、容易に調べ上げられるであろうことは解っている。

ともすれば、既に見透かされているのかも知れない。

「…姉のほうが能力者ではないというのも、今となれば疑わしい話だ。多胎児の片方だけが非能力者という例はそう多くない…才臥がより強力な個体を出し惜しみした可能性も、十分考え得る話だ」

(それでも、俺は…――)

「…そんな馬鹿げた想像だけで、これ以上俺の家族をてめえらの勝手に巻き込む気か」

「先に我々との盟約を破ったのは才臥だ。父親が起こした不始末は、その子供に精算して貰うのが妥当だろう?どうやらお前にも、それが一番堪(こた)えるようだしな」

「なっ、…!!」

俄に表情を凍り付かせた風弓に、如月は憐れむような笑みを浮かべた。

「離れ離れだった片割れと共にあの方のお役に立てるんだ。寧ろ感謝して欲しいくらいだがな」

「ふざけんな…!!如月てめえ、それでも親父のっ…」

「決まりだ、風弓。こうなる前に私は言って聞かせた筈だぞ?恨むなら逃げ出した陸を恨め、とな」

「違う…!あいつは、陸は…っ」

しかし如月は風弓にふいと背を向け、傍らの男に「連れて行け」と声を掛けた。

(陸……姉ちゃん――!!)


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