いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「……んん…」

――目を覚ますと、窓から射し込む陽の光が随分と高くなっていた。

もう正午を過ぎた頃だろうか、船はまだ海の上を進行し続けているらしい。

「りく、は…まだねてる……」

起き抜けのぼんやりとした思考のまま緩慢な動きで身を起こすと、肩の辺りから薄手の毛布が滑り下りて足元に落ちた。

「あれ…?」

全く見覚えのないそれは、自分と陸との体に掛けられていたようだ、陸が一度目を覚ましたらしい形跡はない。

と、いうことは。

夕夏か賢夜か、或いは日野が来てくれたのだろうが――二人一緒に眠っている姿を見られた、ということか。

つい陸につられて眠ってしまったが、こんな姿を見られただなんて、特に夕夏に見られていたら絶対に冷やかされるに決まっている。

(どうしよう恥ずかしい…物凄く恥ずかしい…)

外に出て顔を合わせるのが気まずい、かと言ってずっと此処に閉じ籠っている訳にもいかない。

まだ眠っている陸を起こさないよう毛布を掛け直してやると、観念して甲板への扉に手を掛けた。

「――あ、晴海」

外へ出てすぐのところで目が合うと、夕夏は途端ににやにやと意味深な笑いをして見せた。

「良く眠れたみたいで何より…」

(見られたっ…絶っっ対に見られた…)

「ごっ…ごめんねっ?みんな寝てなくて疲れてるのに部屋、占領しちゃって」
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