いとしいこどもたちに祝福を【前編】
取り敢えず、然り気なく別の話題に持っていこう。

それに、みんなを差し置いて休んでしまっていたのは事実だし。

「ああ、そんなの。最初から君たち優先のつもりだったから気にしないで」

「でも私なんて助けて貰ってばっかりで、何もしてないのに」

「いいからいいから。特に賢なんか、何処でだって眠れるし」

ほら、と言われて夕夏の視線の先を振り返ると、賢夜が床に座り込んだまま壁に凭れて眠っていた。

「けっ賢夜!?風邪ひいちゃうよ!」

慌てて駆け寄ろうとすると、夕夏は呆れたように小さく溜め息をついた。

「そのまま寝かせといていいよ。そいつ昔から一度寝るとなかなか起きない上、無理に起こすと寝起き最悪なんだ」

「ええっ…」

確かに今、自分が上げた大声にも賢夜は全く反応は見せなかったが。

しかし賢夜は特に、自分を港まで運んでくれたり陸を助けに向かってくれたりと大変だったろうに。

「それに、中まで運んでやるにしたってそんな図体でかい奴、私には無理だよ。日野さんも出来ないって言うし」

「だっておじさん、こないだぎっくり腰治ったばっかりで…」

頭上に位置する操舵室から、日野の申し訳なさそうな声が降ってきた。

…確かに、それは無理をさせてはいけない。

「夕夏や日野さんは、大丈夫?ずっと休んでないでしょ?」

「晴海ちゃんは優しいなあ~おじさんそれだけで頑張れちゃうよっ!」
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