いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「私もまだ大丈夫だよ。それに、今朝みたいに二人のお邪魔しちゃ悪いし」

「うっ」

上手く話題を逸らせたつもりだったのに、しっかり軌道修正された。

「でっ、でも夕夏、毛布掛けに来てくれたよね」

「え?ああ、あれは賢だよ。二人がすぐ戻って来ないからって、様子を見に行って。空気の読めない弟で悪いね」

「そ…そう」

「陸はまだ寝てるの?うちにいたときは麻酔が効いてるとき以外、凄く寝起き良かったけど」

賢夜とは正反対で関心したから妙に覚えてたんだと、夕夏は笑った。

「うん、まだ休んでる。多分色々あって疲れてたんだよ」

「君が傍にいたから安心してるんじゃないの?」

「そっ…それはもういいからっ!それに陸は……私じゃ、駄目だよ」

「…は?」

目の前で陸に言われたではないか。

ずっと前から、心に決めた人がいるんだと――

「相手は、月虹にいる人のことなんだと思うけど…すきなひと、いるんだって」

なるべく平静を装ってそう言ったつもりだったが、声が少し掠れて語尾が上擦ってしまった。

「陸からそう、聞いたの?」

すると、夕夏は予想以上に神妙な面持ちで訊ねてきた。
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