いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「うん…それに、私も陸のことを好きなのかどうか…良く解らないし」

「陸が秦に連れて行かれたとき、あんなに泣いたのに?」

「それはっ」

――解ってる。

本当はあのとき、疑心が確信へ変わったことに気付いた。

自分は、陸が好きなんだ、と――

「陸だって…いつも君のこと大切にしてるじゃないか」

「…それは、私がたまたま最初に陸を見付けたからっ…陸は他に、頼る人がいないから……っ」

傍にいてくれるのも、守ろうとしてくれるのも。

自分や仄に、恩義を返そうとしてくれているに過ぎないのだろう。

それを、時折“陸が自分に好意を向けてくれているかも”と勘違いしてしまいそうになる。

陸の家族が見付かればそれも、きっといつか終わる。

傍にいられなくなると、解っている。

「…陸の気持ちを、蔑ろになんて出来ないよ」

「だって陸、もう月虹へ戻る気はないって言ってたじゃない。ならいくら想い続けてるとしても、その人に逢うことはもうない。陸の傍に今いるのは、君じゃないか」

「………そうだとしても、でも…私…」

「晴海、どうして君はそんなに」

「――夕ちゃん、晴海ちゃんをあんまり責めるなよ」
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