いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「日野さん」

「誰もが思い立ったらすぐ行動出来る訳じゃないさ。色恋沙汰に関しては殊更ね、臆病になってしまうものだよ」

その言葉に、顔を顰めていた夕夏は表情を和らげてくすりと笑った。

「…こういうときは、やけに雄弁だね」

「そりゃ、恋愛相談については百戦錬磨のこの私に任せてくれたまえよ」

「また今度ね」

夕夏は得意げな日野を軽くあしらうと、苦笑いを浮かべて俯いた。

「ごめん、言い過ぎた」

「ううん。そんなことないよ」

自分が消極的過ぎるのは解っている。

陸に自分の想いを伝えて、突き放されてしまったら――そう思うと怖くて、動けなくなるから。

逃げていると思われても仕方ない。

「――晴…?」

「!」

背後から不安げな声に呼ばれて振り返ると、心配そうに自分を見つめている陸の眼と目がかち合った。

「陸」

「晴、何かあったのか…?」

「あ…ううん、何でもないの。ごめん、起こしちゃった?」
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