いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「良かった、目が覚めて…!あのあと、ずっと眠ったきりだったから心配でっ…」

晴海はぱたぱたと傍らに駆け寄ってきて、嬉しそうに愛らしい顔を綻ばせた。

自分の回復を、まるで自身のことのように喜んでくれる姿に、少し嬉しくなった。

「ごめん…俺、どのくらい眠ってた?」

「ちょうど三日くらい…」

「三日…」

あの日の記憶は、ぼんやりとしていてまだはっきりと思い出せない。

覚えている部分も朧(おぼろ)げで断片的なところが多いが、晴海の笑顔と名前はすぐに思い出せた。

自分はあのあと、晴海に多大な迷惑を掛けたに違いない。

そう思うと申し訳ないと気持ちで一杯になり、陸は小さな溜め息と共に項垂れた。

「熱も引いたし顔色が随分良くなったし、本当に良かった。時々苦しそうに魘(うな)されてたから、何処か痛むのかと思ったけど…」

魘されていた、と言われどきりとする。

眠っている間に、またあの夢を見ていたのだろう。

彼処からどんなに離れても、あの夢を視ることからは逃れられないのだろうか――

「そう、か。ところで晴、此処って」

「あ。此処は私のうちだよ。ごめんね、小さい家だから狭い部屋しかなくて」

「いや…」

何故晴海が申し訳なさそうに苦笑するのか、不思議だった。
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