いとしいこどもたちに祝福を【前編】
八ヵ国とも、飲酒は概ね十六歳前後から可能と法定で許可されている。

しかし、飲酒を嗜(たしな)むのも酒の席の雰囲気も、余り好きにはなれない。

「そういえば仄さんの仕事先も、夜は居酒屋だったよな」

「うん。母さんは基本的には夕方までの勤務だけど、人が足りないときは夜も手伝って…ひゃっ!」

そのとき、背後から強かにぶつかられて晴海は大きくよろめいた。

「晴!」

すぐ陸が支えてくれたので、転ばずには済んだが。

「…おい、男連れだぜ」と小さく舌打ちが聞こえてきて振り向くと、目の前を数人の男が通り過ぎて行くところだった。

「よう、姉ちゃん気を付けろよ」

そのうちの一人――くすんだ銀髪と赤銅色の眼をした男が、通りすがりざまにそう言い放った。

「ごっ…ごめんなさい」

咄嗟に謝罪してしまったが、明らかに向こうからぶつかられたような。

「晴海、大丈夫だったか」

去ってゆく一団を睨み付けながら、賢夜が声を掛けてきた。

「うん、ちょっとびっくりしたけど平気」

「何だあいつら。俺の声聞いて“何だ、男か”って言ってる奴いたぞ」

「軟派目的でわざと晴海に絡もうとしたんだろうな。ついでに陸を女と見間違えた、と」

その言葉に陸はかくんと肩を落とした。
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