いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「夕夏、先にお風呂使って?私、お湯張っておくね」

「え?そんな、いいのに」

「お風呂の用意とか慣れてるし、好きなの。母さんが仕事から疲れて帰ってくるときとか、よくやってるし」

「…そっか。じゃあお願いするかな。正直、潮風で髪が物凄くべたべただしね。早く洗いたいってのはあるわ」

いつも頭の高い位置で結い上げている髪を下ろしながら、夕夏が息をついた。

「……今頃炎夏、どうなってるかな」

暫くして不意に口を突いたのは、そんな言葉だった。

「…晴海。仄さんのことは心配だろうけど、多分大丈夫だよ」

「うん…本当に色々と有難う、夕夏」

「まずは陸の家族捜しが最優先、かな?明日になったら色々回ってみようよ」

「そうだね」

「春雷には、炎夏にはないような店も沢山あるんだ。ついでにそういうところも色々行こう?」

何やら観光めいてきたな気もするが、暗い気持ちで塞ぎ込んでいるよりそれくらい軽い気持ちでいたほうが良いのかも知れない。

「あ…そろそろお湯、溜まってきたよ」

「ありがと。じゃあ、お先しようかな」

そう言って夕夏は浴室へ入っていった。


 * * *

 
< 225 / 367 >

この作品をシェア

pagetop