いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…おい、今俺のことを偽物呼ばわりしやがったのはどいつだ?」

――すると、食堂の奥から昨夜のくすんだ銀髪の男が現れた。

「!」

偽物(仮)の領主子息が銀髪ということは、本物も銀髪なのだろうか。

「あ、悪いね。聞こえてたんだ」

「…口の聞き方に気を付けろよ、俺はこの国の領主子息だぞ!」

その言葉に、夕夏は必死で笑いを噛み殺そうと試みたようだが耐え切れずに吹き出した。

「どっかで聞いたことある台詞っ…まああれは一応、残念ながら本物の領主子息だったけどっ」

もしかしなくても秦のことだろうが――相手は自分が笑われたのだと勘違いして不快げに顔を顰めた。

「ね、ねぇ夕夏。あんまりあの人、怒らせないほうがいいんじゃ…」

「ごめん、晴海。私さ、ああいう他人の権力を盾に好き勝手する奴、どうしても嫌いなんだよね」

夕夏は笑っていたが、言葉の端々から苛立ちがひしひしと伝わってくる。

「ちっ…生意気な女だ。痛い目見せてやんねぇと解らねえみたいだな」

すると偽物(仮)の仲間と思しき男たちが、ぞろぞろと食堂から姿を現す。

柄の悪そうな男がざっと四、五人は出てきた。

「…あらあら、皆さんお揃いで悪そうな顔しちゃって。ご子息様はお友達付き合いを考えたほうが良いですわよ~」

夕夏はけらけらと笑いながら、晴海と従業員の女性を後ろに下がらせた。

「痛い目見せる?やれるもんなら、やってみたら?」
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