いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「――君が陸だって?随分と面白いことを言うね」
すると今度は偽物(仮)の後方にある入り口の扉の向こうから、くすくすと笑う声が響き渡った。
「だっ…誰だ?!」
男の呼び掛けに応じるように、開かれた扉の先からゆっくりと一人の青年が姿を現す。
「…僕が誰だか解らないのかい?君が陸だって言うのなら、僕を知っている筈なんだけどな」
青年はふわりと柔らかい笑みを浮かべながら、偽物(仮)に首を傾げて見せた。
「なっ…そんなの、知るかっ!!親父が寄越した使いの奴だか誰だか知らねえが、さっさと俺を邸まで連れて行けっ!!」
偽物(仮)がそう言った瞬間、この青年を呼んだと言っていた従業員の女性が、呆れたように首を振っているのが見えた。
「…話にならないね。早々に春雷からお引き取り願おうか」
青年が再び優しげに微笑むと、偽物(確定)とその仲間の足元に突如黒い穴が生まれて、その中に男たちがすぽんと吸い込まれた。
「!!」
「春雷の外までお送りするから、後は自力で何とかしてくれるかな?それじゃあ、さよなら」
青年がそう告げた次の瞬間には、穴は消えて床はすっかり元通りになっていた。
「…今回はまた随分、下準備不足の陸が来たものだね」
青年は少々うんざりした口調でそう言いながら、空色の双眸をふとこちらへ向けた。
すると従業員の女性が真っ先に、青年の傍へと駆け寄ってゆく。
「お疲れ様です…!まさか、お邸から使者として貴方様がいらしてくださるなんて思いませんでしたわ!」
「ちょうど時間が空いてたんだ。そちらの方々は?」
すると今度は偽物(仮)の後方にある入り口の扉の向こうから、くすくすと笑う声が響き渡った。
「だっ…誰だ?!」
男の呼び掛けに応じるように、開かれた扉の先からゆっくりと一人の青年が姿を現す。
「…僕が誰だか解らないのかい?君が陸だって言うのなら、僕を知っている筈なんだけどな」
青年はふわりと柔らかい笑みを浮かべながら、偽物(仮)に首を傾げて見せた。
「なっ…そんなの、知るかっ!!親父が寄越した使いの奴だか誰だか知らねえが、さっさと俺を邸まで連れて行けっ!!」
偽物(仮)がそう言った瞬間、この青年を呼んだと言っていた従業員の女性が、呆れたように首を振っているのが見えた。
「…話にならないね。早々に春雷からお引き取り願おうか」
青年が再び優しげに微笑むと、偽物(確定)とその仲間の足元に突如黒い穴が生まれて、その中に男たちがすぽんと吸い込まれた。
「!!」
「春雷の外までお送りするから、後は自力で何とかしてくれるかな?それじゃあ、さよなら」
青年がそう告げた次の瞬間には、穴は消えて床はすっかり元通りになっていた。
「…今回はまた随分、下準備不足の陸が来たものだね」
青年は少々うんざりした口調でそう言いながら、空色の双眸をふとこちらへ向けた。
すると従業員の女性が真っ先に、青年の傍へと駆け寄ってゆく。
「お疲れ様です…!まさか、お邸から使者として貴方様がいらしてくださるなんて思いませんでしたわ!」
「ちょうど時間が空いてたんだ。そちらの方々は?」