いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「此処に昨夜から滞在中の御客様方ですわ。あの偽物と居合わせたせいで絡まれてしまって」

「そうか。来るのが遅くて申し訳なかったね」

陸も夕夏も、青年が現れてからずっと黙ったまま、呆然と一部始終を眺めている。

晴海自身も言葉を失い掛けていたが――白金の髪をさらりと掻き上げてこちらへ歩み寄る青年に向かって、漸く一言だけ声を絞り出すことが出来た。

「――京、さん」

「また逢えたね。晴海ちゃん」

また――そうだ、先を予見していたかのような京の言葉は的中した。

「あら?そちらの方は、京様とお知り合いでしたの?」

「ええ、炎夏で知り合った女の子なんだ。まさか、こんなところで再会出来るなんてね」

京は穏やかな笑みを浮かべたままだったが、ふと晴海の傍らに立つ陸に視線を向けた途端、 驚いたように眼を見開いた。

「……、…君は」

陸は昨日と同様、眼鏡と上着の帽子で眼と髪を隠していた。

京の手がゆっくりと帽子を取り払うと、その銀糸のような髪が露になる。

「えっ…!?」

すると従業員の女性も、それを目の当たりにして小さく息を飲んだ。

陸は無抵抗のまま、京のされるがまま立ち尽くしている。

次に京はそっと眼鏡を取り去ると、遮るものがなくなった真紅の眼をじっと見据えた。

「――陸」





虚言(そらごと)の容貌と蒼空(そうくう) 終.
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