いとしいこどもたちに祝福を【前編】
(霊奈…それじゃあ、この国の――)

戸惑いがちに京と陸を見比べる夕夏に、集まってきた従業員のうちの一人が咳払いをして見せた。

「京様は、我が春雷の領主様の、ご嫡男でございます」

「へえ、領主の跡取り息子か」

背後からぼそりと呟かれ、夕夏が勢い良く振り向いた。

「賢…!あんたまた、いつの間に来たんだよっ」

「陸の記憶がない、のくだりあたりからかな。寝過ごしたから陸には先に行ってて貰ってたんだが」

何だか只事じゃない雰囲気になってるな、と賢夜は暢気に欠伸をかいた。

「京さん、私っ…領主様のご子息様だったなんて思いもしなくて、今まで失礼を」

「僕はあのとき素性を明かさなかった。だから君が謝る必要はないし、これからも同じように接して欲しいな」

こちらに優しく微笑み掛けながら京はちらりと陸に視線を流したが、陸はふいと目を逸らして俯いてしまった。

「…僕には弟がいてね。其処にいる彼と同じように銀色の髪と緋色の瞳をしているんだ。だけど四年前に突然、姿を消してしまった」

四年前、という言葉に夕夏と賢夜が顔を見合わせた。

「当初は金目当の誘拐かと思われたけど、何の要求もなく手掛かりも見付からなかった…だから僕は時折、他国を回って捜していたんだ。大切な弟――陸の行方を」

陸の記憶が始まっているのは、四年前から。

京の弟である“陸”が、行方不明になったのも四年前。

だったら、やはり――

「…つい最近、弟と良く似た気配を炎夏の国から感じたんだ。その日、炎夏では大きな爆発事件があったらしいね」
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