いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「!は、はい…」

確かに優れた能力者や霊媒師は、周辺の他の術者の気配を感じ取れると聞いてはいたが――

京は春雷から、海を挟んだ炎夏にいる陸の気配を感知したのか。

「急いで駆け付けたかったが、どうしても都合が付けられなくて…その間に弟の気配は消えてしまった」

慶夜を撃退した後、陸の能力は完全に制約の魔法で封じ込められてしまった。

京が気配を読めなくなったのも、恐らくその影響だろう。

「僕が炎夏を訪れたときは、街の中で微かに残る気配を辿ったり、通り掛かった店の人たちに話を聞いたりしてね。晴海ちゃんとはその最後に逢ったんだよ」

まさか君の傍にいる子がその気配の正体だったなんてね、と京は口惜しげに笑って見せた。

「だけど…今の彼からは、何の気配も一切感じ取れない。一体どういうことなんだ?」

「それは…話せば、長くなるんですけど…」

陸の家族を捜しに此処春雷まで来たこと。

それに、月虹のこと。

京に説明したいことは、山程ある。

しかし――陸がずっと項垂れたまま、京の顔を見ようとしないのも気に掛かった。

「そうか…なら場所を移そう。そのほうが気兼ねなく話を出来る」

「えっ、あ…」

ふと気付けば、偽者騒ぎを聞き付けた見物人たちがざわざわと集まり始めていた。

「みんな…」
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