いとしいこどもたちに祝福を【前編】
皆の意思を確認しようと、夕夏と賢夜を振り向く。

すると二人は揃って頷きながら、京――というよりも陸に向かって声を掛けた。

「俺たちは一向に構わないよ」

「…彼は私たちと同じように、四年前に大切な家族を失ってる。私たちの知っている事情を話すべきだよ」

それでも陸は黙ったまま、ただ頷いただけだった。

(陸、一体どうしたの…?)

「じゃあ…すまないけど、この場の収集は任せてしまっても構わないかい?」

京に優しく微笑まれ、従業員たちは元気良く姿勢を正した。

「はいっ、勿論です京様!京様のためなら従業員一同、喜んで」

「どうも有難う。頼んだよ」

彼らの言葉に、偽りや媚び諂(へつら)うような気配は感じられない。

その言動一つを取るだけでも、この国の民は京に対して揺るぎない信頼を寄せているのだと感じる。

同じ領主子息と言っても、こうまで違うものか。

「それじゃあ、僕の家に行こう」


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