いとしいこどもたちに祝福を【前編】
京の自宅――ということは当然、領主邸宅である訳だが、その規模の大きさに一同は驚愕せざるを得なかった。

春雷の領主邸宅及びその敷地は、今まで大きいと思っていた炎夏の領主邸宅を建ててもまだまだ余裕がありそうな程に広大なのだ。

それをさらりと家だと言う京に、応接室らしき広々とした部屋に案内される。

「さて、君たちの話を聞かせて貰ってもいいかな」

――其処で、先ずは晴海が陸と出逢った経緯(いきさつ)を切り出した。

その後に夕夏が行方不明の弟を捜している話と、その弟である慶夜が陸を追って現れたこと――陸から聞いた月虹の全容を話す。

月虹に連れ去られた能力者たちは記憶を失っていること、過半数が洗脳を受けていること。

更に、能力の制約を行う闇魔法が掛けられていること。

話を聞いている間、京はつらそうに顔を顰めていた。

「…成程ね。君たちは彼のために、この春雷までやって来たのか」

京は話を聴き終えると、陸を見つめながらそう呟いた。

その陸は話の最中も終わってからも、ずっと俯いて口を噤んでいる。

家族に逢いたいと、春雷へ辿り着くことに想いを馳せていた筈なのに、どうして――

「…あの、京さんなら彼に掛けられた魔法、解けませんか?」

とにかく余り陸が気後れしなさそうな話題を切り出して、場を保たせたかった。

今までこの眼で見てきた彼の実力を考えれば、京が相当な実力を持っていることが判る――なら闇魔法の解除も、そう難しくないのではないか。

「快く引き受けたいところだが…僕には、無理だ」

「えっ…」
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