いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「彼のすぐ傍にいても、僕にはその闇魔法の気配が感知出来ない。かなり強力で複雑な魔法を掛けられている証だよ」

京は、悔しげな表情で両手をきつく握り締めた。

「僕程度の力では、却って彼を苦しめるだけだ」

「そんな…」

「でも、春雷には勿論僕より強い霊媒師だっているんだ。ちょうど一人、心当たりがあるからそっちに頼んでみようか」

落胆する晴海とは真逆に、京は存外明るい口調でそう言った。

「っ本当ですか?」

「うん。まあ僕の父のことなんだけどね」

――京の父親、ということは。

「じゃあ……春雷の、領主様…?」

「そうなるね」

「…確かに霊奈は優れた霊媒師の家系として名高い。特に現領主は歴代でも高い実力を持つそうだな」

賢夜が独り言のように呟いた。

「やだなあ、そんな大したものじゃないよ。だけど確かに父なら、この魔法を解ける可能性はある」

陸の家族かも知れないとはいえ、通常なら滅多に逢うことの出来ない一国の領主に逢える。

それも、陸を苦しめる魔法から解放出来るかも知れない――

「但し父は今、仕事で他国に出掛けてるんだ。戻り次第君たちと引き合わせるから…」

「――その必要はないぜ、京」
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