いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「!?」

突然割って入った声に、全員が一斉に振り向く。

五人の注目を浴びて、入り口の扉に凭れ掛かっている男は面喰らったように首を傾けた。

「何だぁ?みんな、おっかない顔して」

男は三十代前半くらいだろうか、京と同じ白金の髪をわしわしと乱雑に掻き混ぜた。

「貴方は…っ」

「…父さん」

「え!?」

京の呆れ返った声に父と呼ばれた男は「おう」と少年のような笑顔を浮かべて一同に軽く手を振った。

――この人が、春雷の領主。

日野の話を聞いて若い、ということは認識していたが想像以上だった。

その容姿や表情は京の父親というより、兄と偽っても通用しそうな程に若々しい。

「驚かせないでよ、いつの間に帰ってたの?」

「いやあ、実はその子らが事情を話し始めた辺りからいたんだが、出て行くきっかけを失ってだな?そしたらちょうど俺の話題が出たから少し格好つけて登場してみた」

あっけらかんと笑う父は、詰め寄ってきた息子の肩をばしばしと叩いた。

「全く、一国の主が立ち聞きってどうなんだよ……取り敢えず紹介するよ。この人が僕の父で、霊奈 周(しゅう)。こんなのでも一応、本物の春雷の領主だよ」

「ちょ、京くん?こんなのでも一応って酷くない?」

不服そうに口を尖らせる周に、京は爽やかに「そう?」と微笑み掛けた。
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