いとしいこどもたちに祝福を【前編】
あのとき――

秦が晴海に手を上げた瞬間、頭が真っ白になって居ても立ってもいられなくなった。

晴海を助けたいと思ったら、腕の怪我のことなんて忘れていた。

…まだあんなに力が残っていたことに、自分が一番驚いた。

「秦が能力者なのは前から知ってたけど、陸も能力者なの?」

自身について問われたことに少し戸惑いを覚えたが、陸は一息つくと晴海に頷いて見せた。

「そう。あいつは焔の力を持った能力者で、俺は風を操る能力者」

「へえぇ」

「弱い能力者はあいつみたいに、自分の力を身体の一部に纏うことしか出来ない。もう少し力の扱い方が上達すると自分の身体…例えば掌から、力を飛ばすことが出来るようになる。もっと上達すれば、その飛ばした力を遠隔操作したり、形を変化させたり出来るようになるんだよ」

能力者が珍しいのか、晴海は興味深そうに話を聴いている。

「俺は掌から出した風を、あいつにぶつけて吹き飛ばしたんだ」

「凄いね!もっと他にも、色々出来るものなの?」

「えーと…能力者は魔力と霊力っていう二つの力を持ってて、魔力が強いと威力が上がる。霊力が強いと精霊の力をうまく引き出せるようになって、さっきの操作とか変形の他にも色々工夫が出来るんだ。生まれついた時点で力の強さは決まってるけど、鍛えると少し上げられる」

「能力者って、なりたくてもなれるものじゃないの?」

「うん。精霊が宿ってない人は、能力者とは呼べない。どんな精霊が宿ったかによって、使える魔法も違う。焔の能力者が扱えるのは焔の魔法だけで、水や風の魔法は使えない」

「一纏めに能力者って言っても、陸と秦とじゃ全然違うよね。私、秦以外の能力者って見るのは初めてだけど、それでも陸のほうがずっと強いってことは解ったもの」

――初めて?

「そ…っか。そうなんだ」
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