いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…今まで、何人もの偽者の陸を見てきたよ。随分手の込んだ変装やら下調べやらして来る奴から、笑っちまうくらいに酷い奴まで、本当に退屈しない程にな」

そう言いながら周は、その酷い偽者のことを思い出したのかくすりと吹き出した。

「けどな…どんなに外見や内面を上手く取り繕っても、俺や京にはちゃんと解るんだぜ。だけど今、俺は一目でお前が俺の息子だって確信したよ」

「そんなのっ…どうして……」

困惑した表情で激しく首を振る陸に、周はへらりと笑って見せた。

「何で、だろうな?不確かで曖昧だが、親父の勘だとしか言えないな…だから、もし間違ったら俺は父親失格だ」

「でもっ…それでも俺には、貴方たちの信頼に応えられる自信が持てない…!もし俺が陸じゃなかったとしたら…っ俺は貴方たちを悲しませたくない…!!」

――陸は、家族に逢いたいと言っていた。

当初は疎んじていた自身の銀髪を、大切にしたいと思う気持ちも芽生えていた。

兄弟がいるかも知れないと期待していた陸は、嬉しそうに笑っていたのに。

あの笑顔を、打ち消してしまった不安の正体は何なのだろう。

もしかして話してくれたことの他に、月虹で何かあったのではないだろうか――?

「…わかった」

頑として自身を否定する陸に、周は小さく溜め息をつくと立ち上がった。

「一つだけ、俺の願いを聞いてくれるか?」

「ねがい…?」

これまで陸はずっと俯いていたが、予想だにしなかった周の言葉にふと顔を上げた。

「…愛梨に、逢ってやってくれ」
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