いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「…有難う、晴海ちゃん」
京は陸の後ろ姿を見送ると目を伏せて、安堵したように深い溜め息をついた。
「……逢えるのに逢わないと、きっと後悔するから」
「?」
「私、父と弟を事故で亡くしたんです。それに、夕夏と賢夜の二人も戦争でご両親を」
「!そうか…」
「だから陸には、迷ってるなら逢わないで後悔するより逢って迷って欲しくて」
不安に呑まれてしまった陸に、自分の言葉が届くかどうかは自信がなかったけれど。
逢いに行ってくれて良かった。
「…京さん。陸があんなに不安を抱えていたのは、自分が能力者なのに霊媒師の力も持つからだと、前に言っていました。そんな力を持つ人間は、本当に存在しないんですか?」
――ならば自分は、少しだけでも陸の不安を拭い去れるように尽力しよう。
「…あの子がそう、言っていたんだね」
京は少し驚いたように眼を瞬くと、くすりと笑った。
「はい…有り得ないような力を持つ自分は、人為的に造られた存在じゃないかって」
「そうか…そうだね。普通ならばそんな人間は存在しない。彼が不安に思うのも無理はないよ」
やはり、陸の思う通りなのか。
これまで一緒だった“陸”は――京の弟である“陸”ではないのか。
「…でも僕は、たった一人だけその例外を知っているよ。十八年前、その人が生まれたときからね」
京は陸の後ろ姿を見送ると目を伏せて、安堵したように深い溜め息をついた。
「……逢えるのに逢わないと、きっと後悔するから」
「?」
「私、父と弟を事故で亡くしたんです。それに、夕夏と賢夜の二人も戦争でご両親を」
「!そうか…」
「だから陸には、迷ってるなら逢わないで後悔するより逢って迷って欲しくて」
不安に呑まれてしまった陸に、自分の言葉が届くかどうかは自信がなかったけれど。
逢いに行ってくれて良かった。
「…京さん。陸があんなに不安を抱えていたのは、自分が能力者なのに霊媒師の力も持つからだと、前に言っていました。そんな力を持つ人間は、本当に存在しないんですか?」
――ならば自分は、少しだけでも陸の不安を拭い去れるように尽力しよう。
「…あの子がそう、言っていたんだね」
京は少し驚いたように眼を瞬くと、くすりと笑った。
「はい…有り得ないような力を持つ自分は、人為的に造られた存在じゃないかって」
「そうか…そうだね。普通ならばそんな人間は存在しない。彼が不安に思うのも無理はないよ」
やはり、陸の思う通りなのか。
これまで一緒だった“陸”は――京の弟である“陸”ではないのか。
「…でも僕は、たった一人だけその例外を知っているよ。十八年前、その人が生まれたときからね」