いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「それ、って…」

「僕の弟は霊媒師の素質と風の能力、両方の要素を併せ持って生まれたんだ。通常なら当然有り得ない話だが、弟は違った」

「…いくら月虹でも、人為的にそんな体質の人間が作れるとは思えないよ」

夕夏が小さく呟いた言葉に、賢夜も頷いた。

「…うん。父も当時、前例や同じ体質の人間がいないか随分調べたんだ。けどはっきりしたことは判らなかった。父の霊能力と母さんの風の能力者の才覚を色濃く受け継いだことだけは確かだけど」

「それじゃあ、やっぱり陸は…」

「僕たちの家族だよ。僕は父同様、そう確信してる。後は…本人が母さんと対面して何を感じるかだね」

京は微笑みながら、無意識にか耳に着けられた銀の耳飾りに触れた。

見覚えのある飾りと配置に、晴海は心当たりがあった。

「!京さん、それ」

「うん?」

「陸の両耳にも、同じ耳飾りが同じ位置にあったから…何か意味があるのかと思って」

これかい?と京は意外な話題を振られたためか楽しげに笑った。

「この家では、第一子が生まれたときにこの耳飾りを着ける習慣があるんだ。魔除けのおまじない、みたいなものかな?」

「でも、陸は次男じゃ…」

「あ、僕と陸は異母兄弟だからさ。母さんから見れば陸は第一子だし、父はあんまり生まれ順とか気にしないでやったみたいだしね」

「ええっ?!」

結構複雑な家庭の事情を、たった今さらりと軽い口振りで明かされた気がする。
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