いとしいこどもたちに祝福を【前編】
「秋雨から嫁いできた僕の母は、病弱で僕を出産してすぐ亡くなったんだ。代わりに僕を育ててくれたのが、今の母さんなんだよ」

確かに、白金の髪と蒼い瞳は秋雨の人間に見られる特徴であり、陸とは似付かない。

しかしながら、髪や瞳の色を除けば容姿の良く似ている兄弟だと感じていただけに、その言葉は意外だった。

「陸と母さんは、僕と父さんにとって本当に掛け替えのない存在なんだ。なのに陸も、母さんも…」

母さん“も”――?

眼を細めて言葉を切った京に、その言葉の意味を訊ねるのは何となく気が引けた。

「でも、こうして君たちのお陰で陸が帰って来たから本当に嬉しいよ」

京は改めて一同に「有難う」と口にした。

京がこうして嬉しそうに笑ってくれることが、晴海にはとても喜ばしかった。

あとは陸を含めた彼ら家族全員が、同じように笑えるようになってくれれば――


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