いとしいこどもたちに祝福を【前編】
――周の後を追って、長い廊下と階段を登っていった陸は、周がある扉の前で立ち止まったのを見付けた。
大きな開き戸の前には、一人の女性が立っている。
「旦那様、お戻りでしたか」
使用人らしいその年配女性が、恭しく周に一礼する。
「うん。今日はどんな具合だ?」
「とてもお加減が良さそうですわ。きっと旦那様が早く戻られたからですわね」
愛梨という女性は、何か病気でも患っているのだろうか。
二人の会話を耳にして、そんなことを陸は思った。
「…そうか」
周は苦笑すると、こちらに向かって手招きした。
「おいで、こっちだ」
傍らの使用人は何かを言いたげに陸の姿を見つめたが、黙って扉の端に一歩退いた。
陸が追い付くのを待ってから、周はその扉を開いた。
――沢山の花に彩られた部屋の中央に、大きな寝台が置かれている。
其処には誰かが横たわっているが、天蓋から垂れた幕に隠れてその顔は見えない。
「また随分と沢山、花を贈ってくれたんだな」
誰に向けての言葉か、独り言のような言葉を口にしながら周は寝台の傍にある椅子へ腰掛ける。
周に促されてその隣に立つと、漸く部屋の主の顔を望むことが出来た。
大きな開き戸の前には、一人の女性が立っている。
「旦那様、お戻りでしたか」
使用人らしいその年配女性が、恭しく周に一礼する。
「うん。今日はどんな具合だ?」
「とてもお加減が良さそうですわ。きっと旦那様が早く戻られたからですわね」
愛梨という女性は、何か病気でも患っているのだろうか。
二人の会話を耳にして、そんなことを陸は思った。
「…そうか」
周は苦笑すると、こちらに向かって手招きした。
「おいで、こっちだ」
傍らの使用人は何かを言いたげに陸の姿を見つめたが、黙って扉の端に一歩退いた。
陸が追い付くのを待ってから、周はその扉を開いた。
――沢山の花に彩られた部屋の中央に、大きな寝台が置かれている。
其処には誰かが横たわっているが、天蓋から垂れた幕に隠れてその顔は見えない。
「また随分と沢山、花を贈ってくれたんだな」
誰に向けての言葉か、独り言のような言葉を口にしながら周は寝台の傍にある椅子へ腰掛ける。
周に促されてその隣に立つと、漸く部屋の主の顔を望むことが出来た。